発育・発達を踏まえたスポーツ競技者の育成

発育・発達を踏まえた競技者の育成

発育発達段階を踏まえること

子供から大人へと成長するにつれて人の形態やその機能が著しく変化していきます。

そこで中学、高校生のU-19までの競技者を指導するに際して、発育・発達段階を踏まえることが必須となってきます。

どの時期に体力が高まるかを把握していきましょう。

もちろん個人差がありますが、身長が最も伸びる時期を基準にして、調整力、持久力、筋力の発達を確認していきます。

そうすると、最も早い時期に体をうまく動かす能力である調整力が発達し、長く運動を続ける能力である持久力は身長が最も伸びる時期の12年前、大きな力を出す能力である筋力は12年後に発達のピークを迎えることがわかります。

U-13(小学校期)

 

U-13で正しい動きを取得していることがU-16U-19で大きく伸びるために重要になってきます。

小学生の時期は、神経系が顕著な発育を示すため、動作の取得が一生のうちで最も進みます。

この時期はいろいろな遊びや多くのスポーツに親しむことによって、神経系の関与が大きい、リズム、バランス、タイミングといった運動をうまく遂行する要素(調整力)を高めていくことが最重要課題となってきます。

この時期に調整力を高めておくと、その後、陸上競技に専門的に取り組むようになったときに、力みのないフォームで走ったり、リズミカルな助走から踏切に移ったり、タイミングよく物を投げたりすることができやすくなります。

この段階の子供には、神経系の成熟に加え、バランスのとれた身体の発育がみられりため、初体験の運動でも何度か見て模範してみることで、それを即座に取得することが可能になります。

しかし、即座の習得は、それ以前にいろいろな基本的運動を経験し、準備ができていることが前提となります。

これらのことから、小学校から走・跳・投のいろいろな運動の正しい動作を取得するとともに、野球、サッカー、バスケットボール、水泳、スキー、器械運動などといった様々なスポーツにチャレンジすることも大切になってきます。

ELITEの陸上教室では走・跳の部分を重点的に指導しています。

例えば縄跳びや走りながら紐跳びをしたりミニハードルやラダーを使用し様々なコーディネーショントレーニングを行なっています。

こうした多様な運動経験によって、いろいろな運動のセンスが磨けるだけでなく、筋肉、そして肺や心臓などの呼吸循環器に適度な刺激を与えることができます。

これは身体に過度の負担をかけることなく、筋力や持久力などの体力を高めることに繋がります。

小学校期では、運動を行った結果として体力が高まったというスタンスをとるべきで、体力を高めるために、大きな筋力やパワーの発揮が求められたり呼吸循環器に強い負荷がかかったりするような専門性の高いトレーニングを取り入れるべきでありません。

U-16(中学校期)

中学生の段階では専門種への傾斜をはじめ、陸上競技の基本的な動作を正確に習得させていくことが課題になります。

ここで誤った動作を身につけてしまうと、悪い癖になって、その後のパフォーマンスの伸びを妨害したり、身体に無理な負担をかけてスポーツ障害の原因になったりします。

また、急激な身体の発育のために、動きのバランスやリズムなどが悪くなることもあります。

このような状況に直面したときには、待つ気持ちを忘れてはなりません。

もう一度、動き作りを繰り返して、再び良い動きを取り持って戻すことを待ちましょう。

中学校期では小学校期に引き続き、動作の習得を図るとともに、粘り強さ(持久力)を高めていきます。

この時期は身長の伸びが著しく、それに伴って体重も増加すると同時に、呼吸循環器も徐々にトレーニング耐えることができる状態になってきます。

そこで、持久力を高めるトレーニングを身長が最も伸びる時期の少し前あたりから開始すると良いです。

ですが、いきなり高強度のトレーニングをするのではなく、軽い強度から徐々に高めていくことが大切です。

新しい運動やトレーニングを開始した直後では、初期効果で一気にパフォーマンスが高まるために、どうしても過度なトレーニングを行いがちです。

ここでやらせ過ぎると、スポーツ障害やバーンアウト(燃え尽き)を招くことがありますので十分注意が必要です。

中学校期でのトレーニングの導入は、発育・発達に大きな個人差があるため、細心の注意を払いましょう。

発育段階の違う対象に対して、同じトレーニングをした場合、成長の早い人にとって適切な負荷でも、そうでない人にとっては過度の負荷となり、骨や関節などの障害を招くこともあります。

現実に、腰椎分離症や野球肘の発症頻度はこの時期に多いと報告されています。

また、スポーツ障害を未然に防ぐためには、個々の発育を考慮しながら可能な限りトレーニングを精選し、その量を少なくする努力をすることが求められます。

U-19 (高校期)

ELITEのスクールにはまだ高校生の指導はありませんが参考までに

高校期になると身長伸びが止まるものが多く、身体はかなり強いトレーニング負荷に耐えることのできる状態になっていきます。

この頃から、専門種目への集中を始めていくと良いです。

計画的に徐々に専門的な体力トレーニングを導入していきますが、まだ正しい技術を取得するための動き作りを重視していきます。

あくまで効率的な動作を確実に習得することが、この時期の優先課題であって、筋力やパワーなどの体力はより高度な技術を獲得する上での土台であると考えるべきです。

決して専門的体力を高めることのみによりパフォーマンスの向上を狙うべきでありません。

この頃に習得すべき事は、身体の中心部、例えば体幹や股関節といった大きな力が発揮できる部分の合理的・合目的的な動作と言えます。

これに加えて、身体の軸を意識した動作も重要となってきます。

身体の中心部分の大きな動作や身体の軸が安定した動作を身につけることは、パワフルかつ効率の高い技術や、大きな競技力の向上に繋がっていきます。

高校期も中学校期と同様にスポーツ障害が発生しやすい時期です。

同一部位に高強度の負荷を与えない、トレーニング時間を短縮する、定期的に休養日を設けるといったことに留意しましょう。

これらに留意することが障害の予防だけでなく、バーンアウトを減らすことに繋がります。

一貫指導

指導者の役割として

指導者の役割で重視されるのは、各学校段階の指導者が一貫性の考え方を重視し、それぞれの段階においてやるべきことを確実に実践していくことで、長期的長期計画を遂行することです。

子供から大人へと成長するにつれて、人間の形態やその機能は著しく変化していきます。

そこで、小学生や中学生の段階から競技者として育成するに当たっては、発育・発達に基づいた長期計画が必要となってきます。

特にジュニア期を担当する指導者は常に競技者11人の心身の成長に気を配りながらトレーニングを課す必要性が生じてきます。

身長発育速度曲線 (参考)

上の図で示すように、成長のピークは人により4歳くらいの差が見られることがあるので、それぞれの成長度合いによりグループ化するなど競技者個々に応じたトレーニングを処方することが大切です。

発育・発達に則したトレーニングを課さなければ、パフォーマンスが向上しなかったりバーンアウトに陥ったりするほか、早期専門家の影響からスポーツ障害で競技を断念せざるを得ない状況になるなどの弊害が考えられます。

そうならないためにも、競技者一人一人の発育・発達段階に応じた適切なトレーニング計画を課すことが指導者の役割として重要になります。

陸上競技の各年齢段階と基本的な考え方

U-13

この時期は、専門的に陸上競技を始める前に、多くのスポーツを幅広く経験することによって陸上競技へ導き、専門的な練習への移行を図る時期です。

陸上競技の走・跳・投の動きは全てのスポーツの基本となる運動です。

特に神経系の発達の著しい小学校期には様々な運動の実践を通してバランスのとれた体をつくることが必要となり

特に、神経系の発達の著しい小学校期には、さまざまな運動の実践を通して、バランスのとれた身体を作る事が必要です。

そのため、小学校低学年では遊びを通じていろいろな種類の運動を楽しむことが大切です。

そして高学年になって陸上競技のトレーニングを行うときには、正しい動きを身につけるようにします。

余力を残したトレーニングの実践と十分な栄養摂取と休養をこころがけ、勝利至上主義に走ることなく、ゆとりを持つことが重要です。

上の図は小学校の1週間あたりのトレーニング時間と怪我をしている人との関係を示したものです。

このグラフからは、トレーニング時間が長い人ほど怪我をしている割合が高いことがわかります。

特に週14時間を超えると急激に増えています。

トレーニングはやりすぎてもマイナスの効果をもたらします。

この時期の子供に対しては達成可能な目標を設定し、どんどんチャレンジさせ達成感を得られるような工夫をすることが大切です。

そしてそれを達成できたときは褒めてあげます。

また音楽などを利用し、ゲーム性を高めるなど楽しみながら常に興味を持って活動できるように工夫します。

U-16

思春期に入るこの時期は、子供から大人へと急速な変化を遂げていく重要な時期です。

発育に大きな個人差が見られ、平均的なトレーニングプログラムでは、個人差に対応することができないため、発育状態を十分に把握した指導計画やトレーニングプログラムが要求されます。

陸上競技の基礎的技能を多面的に習得する時期であり、走・跳・投のトレーニングをバランスよく行い、全面的な基礎体力を向上させることが狙いとなります。

中でも、心肺機能の働きが高まる時期ですので、ここで適切なトレーニングを実施すれば持久力が高まり、筋力も強くなります。

例えば、筋持久力をつけるために、自分の体重を負荷にした懸垂・腕立て伏せ・腹筋・背筋・スクワットなどの補強トレーニングも効果的です。

この時期は骨や軟骨がまだ成長途上の競技者が多く、いろいろな障害のリスクが出てくる時期なので、上半身・下半身・体幹をバランスよく鍛える補強トレーニングはその予防としても非常に有効です。

種目間のインターバルジョギングなどでつなぐサーキット形式にするなど工夫すれば、持久力も合わせてつけられ、一石二鳥になります。

また、この時期は身体の発育と同じように精神の発育も考慮しなければなりません。

それは、急激な身体的発達に対して精神面の発達がついて行けずに、情緒的にもきわめて不安定な状態に陥るからです。

指導者は、一律にトレーニングを課すのではなく、それぞれの成長度合いによりグループ化するなど、各個人に合ったトレーニング処方する必要があります。

U-19

専門種目を決め、専門的技術や専門的体力トレーニングを開始する時期です。

この時期は発育の著しい成熟期であり、目先の技術だけにとらわれることなく、年齢に応じた体力向上、(筋力、持久力、柔軟性、便敏捷性など)を図り、中長期的視野に立った技術的な向上へと繋げていくことが重要です。

身のこなしが上手になり、スタミナがついたならば、力強い動きをするために筋力トレーニングを行います。

本格的に筋力トレーニングを開始するのは、一般的に年間の身長伸びが13センチ未満になる時期がベストタイミングと言われています。

高校期には一般的な筋力トレーニングを重視し、その後、大学や社会人へと進むにつれて、専門的なトレーニングへと移行していくことが望ましいと考えられています。

この時期には身体の成長がほぼ完了するので、筋力トレーニングを規則的に実施して、パワーの開発に努めるのがポイントです。

また、心理的にも成長しますので、トレーニング計画の立案やコンディショニング管理など、1人前のスポーツ選手として自立できるようにしむけ、最終的には自分で競技生活をコントロールできるようにします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP